研究

星景写真からの天空の撮影領域の推定

夜空の写真をもとに、そこに写る天体や星座を特定することは天文や星座などの知識を必要とします。この問題はAstrometric calibrationやPlate solvingとして知られています。星々が古くは航海の目印に用いられたように、探査機や人工衛星はスタートラッカという機器を搭載しこの問題を解くことで姿勢推定を行っています。

この研究では、夜空の写真の中でも特に広角レンズで撮影した星景写真と呼ばれる写真でこの問題を解くことに着目しました。提案手法は画角や撮影位置情報などの事前情報を利用せず、与えられた画像が天球上のどの領域を撮影したものかを特定するカメラパラメータを幾何学的計算により求めます。既存手法の多くが必要とする幾何学的ハッシュの事前計算をすることなく、比較的高速かつ正確にカメラパラメータを求めることができました。

卒業論文はこのテーマで執筆しました。2020年11月にComputational Visual Mediaに掲載されました。

人工光源によるスカイグローの可視化

実写のスカイグローと提案手法の可視化結果

都市の街灯やイルミネーションなどの人工的な光源によって照らされた夜空はスカイグローと呼ばれます。スカイグローは不適切な照明の設置によって環境や生活に悪影響を与える光害の一つの側面であり、その可視化は光害問題の啓発や天体観測の適地の選定などに役立つ可能性があります。

スカイグローによる空の輝度値を計算するためのモデルの一つにGarstangが提案したモデルがあり、物理現象に基づいていて現実のスカイグローに最も近いモデルとして光害研究者らによって広く利用されています。これを用いてスカイグローの輝度値を求めるには位置と明るさが異なる多数の光源による光の散乱と減衰を計算する必要があり、計算コストが高い点が課題です。この研究ではGarstangによるスカイグローモデルを利用して全天のスカイグローの輝度を高速に可視化する手法を提案しました。

提案手法では事前計算を行うことでスカイグローの輝度を求める際に必要な積分を削減し、計算の高速化と効率化を図りました。また、人工衛星による光源の観測データを用いたことで、より正確な光源の明るさでスカイグローの計算を行います。提案手法のシステムでは、観測地点の位置と視程を入力とし、地球上の任意地点におけるスカイグローのパノラマ画像を出力することができます。入力パラメータが少ないため、スカイグローの性質に詳しくない人でも容易に可視化できることも提案手法の利点のひとつです。修士論文はこのテーマで執筆しました。